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金色の背徳 第25話

2009/02/28 22:40 

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「今日ね、いつも仕事で使っている興信所にあの女の調査を依頼したわ。腕の良い人たちばかりだから、きっと何か掴んでくれると思う」
「涼子先生の直感としては、やっぱり玲緒奈さんは「黒」ですか?」
 黒も黒、その相手が自分なのだと思いながら尋ねてみる。
「ええ、真っ黒だと思う。きっと愛人がいて、その男と共謀しているのよ」
「でも玲緒奈さんも同じ事を考えているかもしれませんよ。僕らも注意しないと」
 綱渡りをしている自分に、少しだけ酔ってしまう。
「そうね。けどわたしたちはあの雌狐とは違うわ。海原家を守るためですもの」
 手前勝手な理屈に内心で苦笑しつつ、
――この先生が、海原家の血縁であることは確かなのだ――
 繭美の母、そして海原の亡妻の妹、この関係は切れることがない。考えようによれば、玲緒奈よりも涼子の方が強い立場にいる、そうとることもできる。
「さあ着きましたよ」
「え? ここ?」
 おそらく涼子は郊外のラブホテルを予想していたのだろうが、車はわずか十分ほど走ったオフィス街で止まった。
「涼子先生に見てもらいたいものがあるんです」
 呆気にとられている彼女を尻目に、駿策は車を降りた。目の前には建設中のオフィスビルが建っている。
 助手席のドアを開けてやると、涼子は不可思議な表情のまま外へ出た。
「まだ誰にも言ってないんですが、今度ここに事務所を移すつもりなんです。もうほとんど完成していて、後は外溝工事だけ。一ヶ月はかからないと思いますよ」
 狭い敷地を利用した、十階建てのペンシルビルである。ここの八階を、駿策はすでに予約していたのだ。
「さすがに今の事務所じゃ手狭になって。部屋の内装工事は終わっていて、鍵ももらってるんですよ。それで涼子先生に最初に見てもらおうと」
 駿策は鍵を取り出して見せた。
 それを聞いた涼子の表情からは、不満げな色がみるみるうちに消えていく。やはり「最初に」という言葉が効いたのだろう。

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「へえ、素敵じゃない。行きましょう」
 機嫌を直した女弁護士は、彼の腕を取って歩き始めた。
 エントランスのドアを開錠すると、エレベーターが二基設置してある。夜間でも作動することは確認済だ。ゆっくり上るエレベーターの中で、涼子の頬が上気しているのがはっきり分かった。
「この部屋です」
 そう言って涼子を促した。
 およそ二十坪ほどの広さで、壁の二面が大きな窓になっている。何も物が置かれていないので、ガランと広く感じる。
「東南の角ですから、昼は明るいですよ。照明が要らないぐらい」
「ああ、やっぱり新築っていいわね。わたしのところなんか交通の便はいいけど、もう築三十年だから」
 室内を見回しながら言う。
「それでね、涼子先生。提案というか、相談というか、ここで僕と一緒にやりませんか?」
「わ、わたしと……、一緒に?」
「契約してから思ったんです。僕一人じゃちょっと広すぎるかなって。それに僕と涼子先生がこういう関係になったということもあるし」
 駿策の言葉に涼子は目を見張り、媚態とは違う視線を向けてくる。
「もちろんすぐじゃなくてもいいです。僕だって引越しは三ヶ月ぐらい先を考えていますから。それに一緒に住むわけじゃないから、繭美だって玲緒奈さんだって不審には思わないでしょう?」
 熟女のプライドを徹底的にくすぐった。それと万が一の保険である。玲緒奈と仲違いしたときに、涼子が味方にいるのは心強い。
「……ありがとう、駿策さん。嬉しい……、とっても嬉しいわ……」
「まだ時間はありますから、ゆっくり考えてください。僕も先生と一緒にやれるのは、何かと心強いですから」
「そんなに思ってもらってありがとう。明日からさっそく段取りを整えてみるわ」
 嬉々とした表情で涼子は答えた。
「あ、そうだ。このビルの屋上って、けっこう眺めがいいんですよ。ちょっと行ってみませんか?」
 二人はエレベーターで最上階まで上がり、屋上への扉を開く。静まり返った室内と異なり、街の喧騒が少しは耳に届いてきた……。

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テーマ : 官能小説 - ジャンル : アダルト

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