2ntブログ

女神の乳房 第32話

2008/05/20 18:27 

49mmv00143-22.jpg

「素敵なんて陳腐な表現はその人に失礼なんだけど、僕の乏しい語彙にはそれしかないから仕方ないか。とにかく素敵な人だからもちろん結婚はしてるよ。きっと幸せなんじゃないかな。ただ手が届かないっていうのは結婚してるからってわけじゃないけどね……」
「そこまで思われたら女として本望ね……。その人が羨ましい……」
 目を細めて貴彦を見る。
「本当にそう思う? 本望だって……?」
 手が微妙に震えているようだ。唾を飲み込んだのか、喉仏が大きく動いた。
「ええ……、本当よ。でもそこまで思ってくれる人は滅多に居ないでしょうけどね……」
 裕美子はあの男の顔を思い浮かべながら断言した。そして自分を見つめる彼の目が、普段と違う輝きを放っていることに気づいた。
「どうしたの? そんなに怖い顔して……」
「……裕美子さん、貴女のことなんだ……。僕が今話した人は裕美子さんのことなんだよ……」
 鈍い光の中には、すべての邪心を払い落とした澄みきったものも見えた。
「えっ?」
 自分でも間の抜けた声だったと思う。貴彦が何を言ったのか理解するのに少し時間がかかった。
 考えもしなかった。夢にも思わなかった。義理の息子とはいえ、初めて会ったときには彼はすでに十八歳の青年だった。だから子供だと思っていたわけではない、自分は当初から貴彦を一人の男として見てきたつもりだ、裕美子は思った。ただそれは義理の息子というフィルター越しの姿だが。
「ずっと前からなんだ。あなたが父と結婚する前から今日までずっと……。ずっと思い続けてきたんだ……」
 純真な少年のような瞳だ。

143sbd00048-33.jpg

(いったいどういうことなの?)
 喜びよりも驚きが先行してしまうのは無理もなかった。
(でも、あの瞳……、どこかで見たことがあるような気がする。いつだったろう、遠い昔に……)
「高校生のころかな。まだ母親と暮らしてころ、裕美子さんのアパートの近くに住んでいたんだ。きっと知らないと思うけど」
 昔を懐かしむような遠い目つきになる。
「少しでも母親に楽をさせたくてね、新聞配達をしてたんだよ。裕美子さんの部屋にも届けてたんだ……」
 短くなった煙草を灰皿に押しつける。
「何度か手渡ししたこともあるんだ。その時なんか手が震えちゃってね、“おはよう、ご苦労様”って声をかけてもらったよ。こんなに綺麗な人がいるんだ、そう思ってさ、それからは虜になっちゃったよ」
 貴彦は苦笑いを浮べた。
 裕美子のアパートからほんの二、三分の所に住んでいたらしく、通勤途中の裕美子の姿を陰から見ていたのだと言う。高校生から見た二十三歳の女は、まぎれもなく大人の女だろう。そういえばそんな少年がいたような気もするが、記憶にはっきりとは残っていない。
「そんなに、近くに」
 うつろな響きの裕美子の声だ。どう話を続ければいいのか見当もつかない。
「今で言うストーカーみたいだけど……。別に変な気持ちをもっていたわけじゃないよ。ただ純粋に憧れの人の姿を見たい、守りたいっていう、そうだな騎士みたいな感情かな……」
 夫に貴彦を初めて紹介されたときのことが思い出された。
 あの時の彼の驚いた表情、あれは若い母を迎えた驚きではなく、憧れの人を母と呼ばなければならない無念さだったのだ。
 自分が淡い恋心を抱いていていた相手が、いきなり母として現れた時の驚き……、もちろん近くに居られる喜びもあっただろう、しかし同じくらい失望感ももったのではないだろうか。
「それからずっとだよ……、もう十年になるね。だから僕は一度もお義母さんなんて呼んだことはないよね。認めたくなかったんだ……、あなたが義母だなんて。あなたにはずっと僕の女神でいて欲しかった……」
 そこまで自分のことを慕っていたなんて……、裕美子は内臓がえぐられる思いがした。身体が熱くなり、下半身のほうからジンジンと何かが登ってくる。男に抱かれたときのような感じだ。
「だから……、だからあなたのことは全部知っている。その白い肌の温もりも、身体のすみずみまで……。あなたを二度も抱いたのは僕だから……」
 強烈な一撃が裕美子を襲った。



万華鏡の微熟女たち
熟女が教える性教育
にほんブログ村 小説ブログへ
↑ご精読ありがとうございます。ご満足いただけましたら、クリックをお願い致します。

↑さらにご満足いただけた場合は、こちらにもお願いします。

 ↑こちらにもいただけると、大変ありがたいです


テーマ : 小説 - ジャンル : アダルト

女神の乳房Comment(0)Trackback(0) | Top ▲

女神の乳房 第31話

2008/05/11 09:54 

57ssgr00059-13.jpg

「どうしたの? 急に相談だなんて」
 スーツ姿の貴彦をリビングに案内してソファを勧めた。彼は無言で身体を沈め、ふうっと大きく息を吐いた。
「紅茶で良かったわよね?」
 キッチンに行きかけた裕美子に、
「裕美子さん、ちょっとここに座ってよ」
 貴彦は答えた。思いのほかの真剣な表情に少し驚いたが、言われるまま向かいのソファに腰をおろした。
「そんなに大事な話なの?」
 うつむきかげんの貴彦の顔を覗きこんだ。その問いに彼は無言でうなずく。
「もしかして……、もしかして美登里さんのこと……?」
 それとなく、聞いてみたかったことを口に出した。貴彦は再び無言でうなずくだけだ。
「そんな大事な話なのにわたしでいいの……?」
 裕美子はテーブルに頬づえをつき、小首をかしげた。ジーパンにトレーナーで髪を束ねた姿が、いつもより彼女を若く見せている。どこかあどけない少女の雰囲気を備えた笑みに、貴彦は戸惑っているようだ。
「煙草、吸っていい?」
 ため息が半分混じった言葉に、裕美子も無言で灰皿を差し出した。火を点けて一口だけ大きく吸い込み、横を向いて煙を吐き出すと、彼はすぐにそれを揉み消した。
「美登里さ……僕以外にも男がいるんだ……」
 憎しみという響きより、むしろ投げやりのようなだった。
 頭の片隅で多少は想像していたとはいえ、言葉にすると重く響く。美登里さんが……。「まさか」と言うべきか、「やっぱり」と答えればいいのか。
「あなたの知ってる人なの?」
 ならば昨日の姿は愛人との逢引きのためだったのだろか、裕美子は切れ長の目を細めた。貴彦は首を振り、
「ご主人が亡くなってからずっとらしいけど……。僕の知らない人だよ」
 まるで人ごとのようなセリフだった。
「あなたと婚約してるのに……?」
 さらに驚いた表情をしてみせたが内心は複雑だった。
(人妻の身で夫以外の男に抱かれる女もいるのよ、あなたの目の前にね……)
 もう一人の自分が心の中で呟く。義理とはいえ、自分の母親が浮気をしているのを知ったら貴彦はどう思うだろうか。
「ご主人が亡くなった直後はさ、淋しかっただろうし、頼れる人が欲しかったんだろうと思うからね、別にそれはいいんだけど……」
 再び煙草をくわえ、続けた。
「僕と知り合ってからも続いているのが……何ともやりきれない」
 婚約者に裏切られたというのに、貴彦には怒りはおろか、悲しみもそれほど感じられない。声を震わせるわけでもなく、拳を握り締めるわけでもない。感情が昂ぶるどころか、いつも以上に冷静だった。まるで友人の噂話をしているような軽さが裕美子には理解できなかった。
「それで美登里さんとは話したの?」
「うん……。夕べはっきりと言ったんだ、君とはやっていけないって……」
 自分と出会う前の事は詮索するつもりもないし、実際にしていない。だから別に他の男と肉体的な関係があったとしても、それはかまわない。ただ自分と交際を始め、しかも婚約した後もその関係を続けているのが許せない、彼は言う。




にほんブログ村 小説ブログへ


 

>> ReadMore

テーマ : 官能小説 - ジャンル : アダルト

女神の乳房Comment(0)Trackback(0) | Top ▲

女神の乳房 第30話

2008/05/07 17:26 

h_102sbns00052-7.jpg

(まだ何か挟まってるみたい)
 帰宅途中の車内で裕美子は思った。
 足を動かすだけでジンジンする。身体全体の火照りもまだ冷め切っていない。しかし不快感ではない。体内のエネルギーを完全燃焼した心地よい充実感があった。
 今回も絶頂の瞬間に気を失ってしまい、目覚めたときにはすでに男の姿はなく、置き手紙が残されていた。筆まめな男のようだ。
 手紙には、裕美子への謝辞と賛辞が綴られていて、男の思いを再確認することができた。追伸として男の携帯電話の番号が申し訳なさそうに記されており、裕美子の方からも連絡を取ることができるようになった。しっかりとアドレス帳に書き込み、携帯にも登録しておいた。登録名は「信者」にした。
 昼下がりの道はすいていた。まだ帰宅ラッシュには時間があり、快調に運転することができた。ホテルを出てから初めての赤信号に車を停めた。
(そういえば美登里さん、どうしたかな?)
 不意にホテルで見かけた美登里の姿が思い出された。あの濃い化粧に露出度の高い服装は、普段からは想像がつかない。
(貴彦さんと会う以外は考えられないけど……。たまには気分を変えてみたかっただけなのかも……)




にほんブログ村 小説ブログへ



 

>> ReadMore

テーマ : 近親相姦 - ジャンル : アダルト

女神の乳房Comment(0)Trackback(0) | Top ▲

 | Blog Top |