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女神の乳房 第26話

2008/04/16 15:27 

「もう十日……。やっぱり本当に一度っきりってことなのかしら……」
 夫を会社まで送って行った帰りの車中で、裕美子はため息と一緒に吐き出した。
 若い妻に送ってもらうのが嬉しいらしく、夫は週に何度かは裕美子に送迎を頼んだ。
 県外のある町の再開発事業を引き受けたらしく、「僕の生涯で最大の仕事になると思う」そう喜んでいた。地元の住民や商店街との打ち合わせ、下請け業者の手配など、精力的な活動を続けていた。男として充実した毎日を送っているのだろう、最近は何だか若返っているように感じられた。
(そんな元気があるのに……。何故わたしには……ダメなのかしら)
 いつもの疑問だったが、今回は少し感じ方が違っていた。不満をぶつけるのではなく、夫の肉体への純粋な疑問になりつつあった。あの日以来、自分自身に少しだけ余裕を感じることができるようになったのだ。
(もしかして本当は治ってるんじゃないかしら? 治ってるのにわたしに黙ってるのかも……)
 違った角度から推測してみた。徹夜も平気で仕事をこなす夫が、今も性的に不能とはどうしても考えられない。
(それなら何故わたしに黙ってるの? わたしに隠してるなんて、それこそ考えられない……)
 そんな事を思いながらも、
「身体には気をつけて下さいね」
 後姿の夫にそう声をかけるのが精一杯だった。




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テーマ : 官能小説 - ジャンル : アダルト

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