男は喘ぎながら女に自分の体重を預け、重なるようにベッドに倒れこんだ。腰を密着させて激しい抜き差しを繰り返す。
「あっ、あっ、あっ、気持ちいいわぁ……。あぁ……、とってもいいっ!」
恍惚の表情で足を大きく開いて男の律動を受け止める。男は女の足を持ち上げて肩に掛け、腰だけを突き出す。女も自分で乳房をわしづかみし、揉みくちゃにした。
「だめ、だめよ。は、はあぁ! いいっ、いいっ! い……、いきそう……よぉ……」
息を弾ませながら激しく首を振る。たわわに実った乳房が身体のくねりとともに大きく揺れた。
「僕もいくよ……」
「来て、来てっ! わたしの中にちょうだいっ!」
目を閉じて歯を食いしばった女は般若のような顔になった。両手で乳房を揉みながらあごを突き出す。
「ああああっ! いくっ、いくっ! い……、くぅっ!」
大きな津波にさらわれるような感覚に襲われ、四肢を痙攣させた女はひくっと大きく腰を浮かせた。男も女の絶頂に合わせて熱いものを放出し、ぐったりと重なった。
すすり泣きのような女の呼吸音が細く響き渡る。ぐっしょりと濡れたシーツが二人の激しさを物語っていた。
軽く唇を交わし、男は女の身体から離れてベッドに寝転がる。さすがに呼吸が乱れていた。精根尽き果てたという顔つきだ。
女は少し頭を持ち上げ、男に腕枕を要求した。まだまだ筋肉の衰えのみえていない腕を首筋にすべらせて抱き寄せる。
「今日は……、まだゆっくりできるの?」
肌をさすりながら尋ねる女の息もまだ荒い。すでに夜も深まり、表通りを走る車の音もほとんど聞こえなくなっている。男はまだ女の部屋で一夜を明かしたことはなかった。
「ああ……、まだ大丈夫だよ……」
苦しげで、しゃべるのが辛そうだ。激しく上下している胸からは、今にも鼓動が聞こえてきそうだった。
「ごめんなさいね、疲れさせちゃって……」
「君があんまり素晴らしいからさ……でも、さすがに疲れたよ。やっぱり年かな……」
甘えるような表情が女の母性本能をくすぐる。自分より一回り以上も年上の男なのだが、ときおり少年のような雰囲気をかもし出すことがあった。
「そんなことないわ……。とっても素敵だったし、あなたは充分若いわよ」
チュッ、と音をたてて男の乳首を吸ってみる。
「ねえ、奥さん心配しないかしら……?」
毛布の中で足を動かして男にからみつく。男の体温が心地よかった。
「そんなに早く帰って欲しいのかい……」
ゆっくりとした男の返事に、
「もう、すぐそういう言い方するんだから」
怒ったそぶりで乳首に噛みついた。もちろん本気ではない。顔をしかめた男は、
「遅い帰宅はいつものことだからね」
と、優しい手つきで女の髪を撫でながら応えた。
常に悠然とかまえているガッシリとした体躯、何事にも動じないような目、そして自信を発散している背中……。
「もし、もしよ。奥さんにばれたらどうする?」
意地の悪い質問だと思いながら、女は自分の興味をぶつけた。すぐには答えず、男は手探りで枕もとの煙草を取ろうとした。
「ねえ、どうするの?」
身をのりだして女は煙草をつかんだ。一本くわえて火をつけると、その明かりが男の目の前で揺れる乳房を照らし出す。サッと男の口にくわえさせ、素早く腕枕に戻った。
薄く口紅のついたフィルターを噛み、男は唇の端から煙を吐き出した。女の質問への答えを模索しているようでもあったし、何も考えていないようにも見えた。
「どうするかなぁ……」
他人事のような響きが返ってきた。
もちろん女もはっきりとした答えを求めていたわけではない。男の本心の欠片でも知ることができれば、と思った程度なのだ。
「まあ、多分その心配はないよ。僕らはお互いのことは干渉しないようにしてるしね……。彼女は彼女で適当に遊んでいるだろうしさ……」
(そんなの答えになってないじゃないの)
そう思ってみたものの、それ以上の突っ込みはしなかった。ただ、
「そうかしら……?」
と呟いて男の胸に頬をすり寄せた。汗と煙草の混じりあった男性的な匂いが女の官能を疼かせ、ついさっき自分を絶頂へと導いてくれた男のそれに手を伸ばした。
「おいおい……、ちょっと待ってくれよ……」
笑いながら煙草を揉み消し、
「そんなに若くないんだからさ……」
男のそれは戦いを終えた戦艦のように眠っていた。しかし女の指の動きに反応し、しだいに臨戦態勢を整えていく。
「だめよ、奥さんの前で使えないように全部吸い取ってやるんだから」
毛布の中に顔をもぐりこませ、女は男のそれを口にくわえた。すぐに膨張を始めた男のものは、女の口いっぱいに膨らんでいった。
「大丈夫だよ……。彼女は僕がまだダメなままだと思ってるんだ。だからその心配はないんだ」
女の髪をいたわるように撫でながら男は言った。
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