十字架上の貴婦人 第3話
この淫靡な行為は、媚薬の常習性とうしろめたさが重なり合っていた。いったん身体が覚えてしまえば、どこまでも欲するようになるかもしれない。貴和子はそれが怖かった。
ヒップの辺りが冷たい。
とめどなく流れる淫水が、バスローブでは抑えきれずにシーツまで染み込んでいるのだ。
――夫に女がいるのでは――
火照る肉体を持て余し、そう邪推した時期もあった。
恥ずかしい話だが、興信所に夫の浮気調査を依頼したこともある。しかし結果は「白」だった。夫には他の女の影さえないという事実が確認されただけだった……。
肉体の昂ぶりが上昇するにつれて、満たされない思いも高まっていく。だからこそ、自分で慰める姿がいっそう虚しく思えてしまう。
「あ、つ、つうっ……ん」
切なく喘ぐ蜜壷に中指を挿入すると、零れるように淫汁が流れ出してくる。
全身がカッと燃え立ち、ヒリヒリするような陶酔に襲われた。乳房を揉みしだく手にも力が入り、声が抑えられない。
淫らに堕ちていく自分に歯止めを掛けようとする理性と、心地よい奈落に身を任せてしまいたい衝動が、振り子のように揺れ動く。
それでも、今夜のように、身を焦がされるほどの肉欲は初めてだ。
――彼が、彼が――
夫への恨めしい気持ちがつのる。そんな淫心が肉の奥までもかき乱すのだ。
繊細な中指の振動に、熟襞が歓喜の涙を漏らしながら、ねっとりと絡みついてくる。関節を折り曲げて壁面を探ると、快楽のポイントに触れるたびに女体は反り返った。
「はうっ……ん! あんっ!」
孤独な蜜戯で悶える自分の痴態に、貴和子は自ら翻弄された。
荒っぽい指の動きに反応した蜜壷は、湿った粘膜を激しく収縮させ続け、痺れるばかりの陶酔を彼女の脳髄へ送り込んだ。
「あ、ひっ、ひいっ……ん! あ、ふうっ……」
開いた脚を突っ張らせ、身体をのけ反らせる。研ぎ澄まされた女体は、滝壷に飲み込まれるようにクライマックスを迎えた……。
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