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女神の乳房 第16話

2008/03/30 21:01 



 重い目覚めだった。一晩眠ったはずなのだが、まるでさっきまで激しい運動をしていたような疲労感がある。
(なんて夢なの……)
 なかなか起き上がれず、しばらくベッドの中でぼんやりとしていた。
 昨日の電話の事を考えると憂鬱になり、ますますベッドから出るのが嫌になる。警察に行く事も考えたが、あの男から目に見える形で脅迫されたわけでもない。手紙も破り捨ててしまった。まして自分の過去のことが知られれば破滅につながる危険もある。裕美子は何よりもそれを恐れていたのだ。それだけは何としても避けなければならない。
(電話の感じからすると、そんなに悪い人じゃないかも……)
 努めて相手のことを好意的に解釈しようとした。そう思うことで、少しは楽になるからだ。
(わたしが抱かれれば済む話なんだわ……。それであの男が満足するなら、それも仕方ないのかもしれない……。でも一度だけっていう保証はない……)
 朝日が眩しいとしか思えない自分が嫌になった。
(だけど……、やっぱり一度は会わなくちゃいけない……)

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 胸の中に鉛を抱え込んだように鬱々として午前中を過ごし、約束の時間が近づいていた。食欲も湧かず、朝から何も食べていない。好きな紅茶も口にできず、こんな状態が続けば倒れてしまいそうだった。それでもいつも通りの家事をこなし、電話機を見つめながら待った。いつ鳴るかとビクビクしながら待つのは苦痛だったが、何も手につかないのだ。死刑執行を待つ囚人はこんな心境なのだろうか、裕美子は思った。
 ベルが鳴った。普段は耳に心地よい電子音なのだが、この時ばかりは非常ベルのように感じられた。息を呑み、たじろぎながら裕美子は受話器を取った。
「小笠原でございます」
 少し声がかすれた。
「奥様」
 低い声が響く。やはり声を作っているのだろう、昨日と少し感じが違う。
「貴女のお答えを」
 無駄な言葉をはさまず、単刀直入に切り込んでくる。その声には自信さえも感じられた。
「はい……」
 次の言葉が出ててこない。裕美子は受話器を持ったまま立ちつくした。
「貴女の正直な気持ちを聞かせて下さい……」
 男は少し苛立っているようだ。
「はい……」
「それは了解の返事と考えていいんですね」
 畳み込んでくる男の勢いに、裕美子は圧倒された。

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「はい……、結構です……」
「本当にいいんですね?」
「はい、あなたとお会いします……」
 口に出した瞬間、身体に溜まっていた膿がすごい勢いで流れ出ていくような気がした。喉のつっかえがとれ、すがすがしくさえもあった。
「ありがとうございます。あなたはやはりわたしの思っていたとおりの人でした。美しいだけでなく、心も広く情け深い。あなたを女神として崇拝してきたわたしは間違っていなかった」
 男は詩人のような言葉を並べて裕美子を賛美した。彼女の耳にはほとんど届いていなかった。
 明日の一時にPホテルのロビーにきて欲しい、そう言い残した男の言葉だけははっきりと聞きとることができた。
(これで良かったのだろうか?。わたしは取り返しのつかない事をしてしまったのではないか……)
 胸の奥に新たな不安が湧き出てくる。Pホテル、Pホテルと二度ほど口に出してみた。いかがわしいホテルではなく、駅前にある、むしろ高級なシティホテルだ。何度か待ち合わせで使ったことがある。
(でもこうするしかないのよ。もし断ったらどんな手段に出るか分からないもの……。相手は自宅も知ってるんだから……)
 何とか自分自身を納得させようと努力してみた。明日の午後なら大丈夫だ、夫が帰るのは明後日の
夜だから、裕美子は深くため息をついた。
(すべては明日……)




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勝気な痴女たちの男根狩り



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