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女神の乳房 第11話

2008/03/22 22:42 

 勝気な痴女たちの男根狩り

 本を閉じ、裕美子は思いっきり背伸びをした。大好きな推理小説を読んでいたのだが、気にかかることが多すぎて全く頭に入ってこなかった。
 高くなった太陽がカーテン越しにたっぷりと室内を暖めてくれている。暖房を切って、壁に掛かけてある時計を見た。
 かすかに携帯の着信音が聞こえる、そう気づいた時、裕美子はベランダで洗濯物を取り入れていた。すぐに手を止め、小走りで携帯に駆け寄る。液晶画面には「W」の文字が浮かび上がっていた。一回大きく深呼吸をして電話を取る。
「裕美子さん? 渉です」
 昨日聞いたばかりのだが、ひどく懐かしく待ち遠しかった声だった。
「昨日の今日でちょっと早すぎるかな、とも思ったんだけど君の声が聞きたくてね。今、話してていいの?」
「大丈夫よ。実を言うと、わたしも渉さんからの電話を一日待ってたの」
 少しもったいぶってやろうと思っていたのだが、嬉しくなってつい本音を漏らしてしまった。
「そいつは嬉しいな。ところで明日はどう? 休みが取れてね。もちろん夜までには帰すからさ、どこかドライブにでも行かないか?」
「うん、いいわよ。明日は一日空いてるし」
 知らず知らずのうちに裕美子の声は弾んでいた。
「それでどこへ行けばいいの?」
 渉が指定したのは、裕美子の自宅から歩いて十分ほどの駅だった。最寄りではなく、ひとつ遠い駅だ。渉の配慮だろう、車で迎えに来てくれるという。
 時間を十時と決め、じゃあ明日と言って電話を切った。用件だけの簡単な連絡だったが、切った後もしばらく受話器を握ったまま、明日のことを思い描いていた。もっと話していたかったが、明日になれば会えるのだ。裕美子の胸は何年ぶりかの期待に大きく膨らむのだった……。



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 ベッドに寝かされ、両足を高く抱えあげられていた。すでに男のものは奥深くに侵入し、熱く火照る裕美子の肉壁に包まれている。
 力強い男の躍動は、その一つ一つが振動となって裕美子の脳を揺さぶる。乳房も男の手の中でプルンプルンと振るえていた。こすり合わせる動きに、彼女は腰が抜けるような感覚で声を抑えることができず、
「あっ……、んっ……、ううっ!」
 喘ぎながらも、自分の指を噛んで堪える。恥じらいを捨てきれない裕美子の仕草に興奮させられたのか、男はいっそう激しく腰を打ちつけた。身体がぶつかる卑猥な音が三十四歳の女をしだいに麻痺させていく。その一方で、快感を受けとめる肉体は鋭さを増すのだった。
(あなたは誰? いったい誰なの?)
 暗闇の中で男の手が裕美子の股間へ忍び寄ってきた。亀裂に沿って二本の指で肉襞を開いてそっと真珠に触れる。円を描くような動きは、おそらく親指だろうか。柔らかさと力強さをおりまぜ、熟女の官能に迫ってくる。
「ああっ……はあぁ! 素敵ぃ……」
 ねっとりした指での愛撫と腰の動きに、裕美子は身体を弓なりにし、あごを突き出して応えた。全身が性感帯になっているように、どこを触られても身体が大きく反応してしまう。
(ねえ、教えて。あなたは誰なの?)
 男の逞しい腕が背中に廻され、裕美子は抱き起こされた。ベッドの上で向かい合って座る形になったのだが、暗くて男の顔は見えない。しかし、逞しい腕と胸板の感触、肌の温もりや首筋にかかる吐息は確かなものだった。そして何より、自分の中で躍動する硬直したもの、それが裕美子に与える悦びは男の存在そのものだった。

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 その悦びをさらに深く大きなものにするため、裕美子も腰を使いながら押しつけると、男はベッドの弾力を利用してグングン突き上げてくる。
「うっ、ううっ!」
 腹のそこから搾り出すような声を出し、彼女は男の首に手を廻して抱きついた。男の腕に力が入り、ギュッと抱きしめられると、息苦しさと同時にこの上ない幸福な気持ちを覚えた。
(何故わたしはあなたに抱かれてるの?)
 二人は唇を合わせ、裕美子の方から舌を入れた。唾液の混ざり合う音と、呼吸音が室内に響き渡る。
 不意に男が裕美子に身体を預けてきた。唇を合わせたまま、男の体重を受けとめてベッドに倒れた。艶のある黒髪も一緒に投げ出される。足を大きく開かれ、男はさらに深く入ってきた。裕美子も太ももを男の腰に巻きつけ、首に廻した手に力を入れる。男の汗が雫となって裕美子の顔に落ちる。
「うっ……、あっ、あっ!」
男の動きが速くなると、裕美子の上気した全身から甘い体臭が発散した。
「ああっ、ああっ! あ…、ううっ、ああっ! 壊れるぅ!」
 首を左右に激しく振る裕美子を、大砲を撃つような動きで男は責め続ける。
 身体がバラバラになるような恐怖感と全身から力が抜けていく虚脱感で身体が浮いていくような気がした。
「ひぃっ! だめっ、だめっ! 壊れるっ、壊れちゃうっ!」
 男は両側から乳房を持ち上げるようにし、その谷間にむしゃぶりついた。力まかせに揉まれ、吸われ、裕美子は痛みとともに大きな悦びを感じた。
「だめ、だめっ! わたし……、もうだめっ! ああっ、凄いっ! 死んじゃうぅ!」
 何か叫んでいないと、本当に身体が浮かび上がってしまいそうで、声がかれるほど裕美子は喘ぎ続けていた。男も頂上の寸前まで来ているらしく、小刻みな速い律動に変わった。男の硬直の動きで悟った裕美子は、最後の力を振り絞って肉襞でそれを包んだ。
「愛してるよ、裕美子……」
 そう耳もとで囁かれたとき、裕美子の頭の中は真っ白になり、男の熱い液が体内に流れ込んでくるのを感じた。結合部から全身に震えが飛び散り、
「愛してる! わたしも愛してるわっ! 好きぃ!」
 叫ぶと同時に視界から闇が消えた。


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 静寂を破る目覚し時計の音で裕美子は目を覚まし、慌てて音を止める。いつも六時半には起きるので、ほとんど使ったことはないのだが、今日の渉との待ち合わせのために念を入れたのだ。
(また見ちゃったわ……。寝言で叫んだりしてないかしら?)
 ベッドの中で身体を伸ばしながら思った。外は曇っていて暖かくなりそうにもない。それでも汗を吸ったパジャマが肌にべとついて気持ち悪い。
(それにしてもだんだん内容が過激になってるみたい)
 着替えとバスタオルを持って浴室へ向かう。勢いよく熱いシャワーを浴び、汗と一緒にいやな夢も洗い流す。顔から胸へ浴び、乳首に当たるとピクンと身体が軋んだ。
(嫌だわ、こんなこと今までなかったのに……)
 口に手をあて、一人で顔を赤らめる。
 バスタオルを巻いた身体に薄手のガウンを羽織り、紅茶を淹れた。ドライヤーをあて、髪を乾かしながら時計を見ると、八時を少し過ぎていた。
(まだ時間は充分)
 長い髪を梳かし、ゆっくりと乾かす。この時間が裕美子は好きだった。
 結婚するまではずっとショートのままだったのだが、結婚を期に伸ばし始めたのだ。八年近く伸ばし続けていることになる。腰近くまである艶々した黒髪は、裕美子の密かな自慢だった。その髪の手入れをしている時間は、今の幸せを実感することができるのだ。
「何を着ていこうかな」
 鼻歌交じりの声が洩れる。その声に重なるように、軽快なリズムの着信音が鳴った。画面には「W」の表示、渉からだった。



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