十字架上の貴婦人 第10話
「来ないで!」
近づこうとする男を、張り裂けそうな声で制した。
――なんて格好なの……
背中を一筋の汗が伝う。中世の拷問そのものであった。しかも全裸でいたぶられる羞恥も加わっているのだ。
これが今まで幸福だった見返りなのだろうか。
つい昨日、いや、今朝家を出るまでは続いていた幸せな日々が、たったひとつ歯車が狂っただけでこれほどにまで落ち込まなければならないのか。
「それじゃあ手首が痛いだろう」
男は部屋の隅から木製の台を二つ持ってきた。
それぞれを貴和子の脚の下へ置き、さらに鎖を少し緩める。手首の痛みは全体重の負担から解放され、わずかに楽になった。それでも恥辱の十字架の姿勢は変わらない。
「何度も言うが、俺にはあんたを苦しめるつもりはないんだ。だからあんたもあまり手こずらせるな」
男が唇を舐める不快な音が聞こえた。
肉体の自由を完全に奪われ、しかも宙吊りにされているのだ。もはや無駄な抵抗さえできない。貴和子は身の不幸と神を呪った。
「フッフッフッ……、待ちに待った、憧れの奥様の秘所が拝めるぜ。旦那しか見たことのない麗しい泉をな」
「やめてッ、やめてぇ!」
男の吐息を繁みに感じた。
獰猛な獣の呼吸、そして彼の放つ熱気に恥毛が焼かれそうな気がした。貴和子の叫びも、悪魔の荒い息にかき消された。
無残に開かれた貴和子の太ももに、悪魔の唇が這った。柔肌に唾液の刻印が波を打つ。羞恥と恐怖、そして怒りが白い肌を桜色に染める。
「素晴らしい肌だ……。この張り、この柔らかさ……、美しすぎるぜ……」
純白のもち肌と対照的に、貴和子の繁みは濃い。腋の下、その他の体毛はほとんどないが、髪の毛と恥毛だけは黒々としている。
デリケートなラインの処理後が、青々と光る。そこから太ももの付け根までは皮膚が薄く、幾本もの静脈が浮き上がっていた。肌理の細かい肌は、雪の結晶が連なったように淡く悶え、熟女の脂肪をほんのり包み込んでいる。
「そして、一番見たかったのが、ココだ……」
ゆっくりと恥毛をかき上げた悪魔は、貴和子の花園に顔を寄せた。唾を飲み込む音が彼女にも聞こえた。
「いい匂いだ、奥さん。あんた、出掛けにシャワーを浴びたんだな。うん……、石鹸の心地よい香りと、あんた本来の芳しい体臭が見事に結合しているな……。ほんと、たまんねえよ」
繁みに隠れていた深遠なる泉が露わになる。
二匹の赤い蛞蝓が横たわったように盛り上がった輪郭。桃色や茶褐色、色とりどりの花びらが重なり合う中心部は、わずかに潤いを見せていた。それらが蝋燭の炎に照らされ、艶やかな妖光を煌めかせている。
「いやぁ……」
固く目を瞑り、貴和子は下唇を強く噛んだ……。
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No:64 2009/07/11 10:21 | #[ 編集 ]
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