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十字架上の貴婦人 第1話

2009/05/26 08:20 

第一章 陥れられた令夫人

 湯上りの湿った身体にバスローブをまとい、財部貴和子は秋の夜風に身を任せた。長い黒髪がわずかに揺らぐ。
 灯りを消した室内に、ほのかな月明かりが小さな影を作る。夫のいない夜には、ベッドサイドに腰掛け、こうして肌の火照りを静めるのだ。
 ひんやりした流れが、胸もとから石鹸の匂いを立ち上らせ、彼女の芯を疼かせる。
 昼の間はどうにか抑えているが、夜になると柔肌が騒ぎ出してしまう。まるで爪先からじわじわと這い上がってくる妖虫のように。
 風の冷たさか肉体の昂ぶりか、貴和子は震えを感じた。
――ああ……、だめだわ――
 窓とカーテンを閉め、ダブルベッドに横たわると、黒いシーツがバスローブの白さを浮き上がらせる。
 貴和子はそっと裾をめくり、しなやかな指を滑らせた。片手で腰紐を解きにかかる。下腹部を撫でつつ、細い指先が繁みにかかる。まだ湿り気を残した恥毛たちをかき分けると、中指がぷっくりした肉芽に触れた。
――はあっ――
 声には出さず、心の中でため息を吐く。
 包皮の上から軽く押さえてみると、じわっと心地よさが広がり、芯の疼きが少しだけ治まったような気がした。
 そこで止めておくつもりだったが、貴和子の意に反して指先はさらに奥へ進んだ。
 いつもそうするように、人差し指と薬指で皮膚を外側へ引っ張った。肉芽の包皮がめくれ、淫裂が口を開ける。それがかえって大きな空虚を感じさせる。
 紅色の宝石が露わになった。
 淫靡な自分の姿を脳裏に描くだけで、ヌルリとしたものが流れ出す。その蜜に指をまぶし、ふんわりと紅玉に触れた。
「はっ!」
 かさぶたを剥がされる痛みにも似た刺激が、一直線に喉もとまで駆け上がる。思わぬ声の大きさに、貴和子は自分でも驚きを禁じ得ない。誰かに聞かれているようで、とっさに口を覆った。
――夫に抱かれたのはいつだったろうか――
 消えかけていた悦びを思い出し、貴和子は考えた。
 この自分を慰める行為に、未だ罪悪感が抜け切らない。一ヶ月に一度だったものが二週間に一度、そして毎週に……。
 しだいに間隔が短くなり、今ではもう二日を空けると身体が悲鳴を上げてしまう。夫が出張で留守の日には、今夜のごとく必ず一人だけの宴を催すようになった。
 貴和子は紅玉をさするように指を動かした。
「あっ、ふ、ふうっ……ん」
 子犬のような吐息が、独り寝のベッドルームに木霊する。この全身を刺し貫くような刺激が欲しくて、彼女は今夜も自らを慰める。
 膝を立て、脚を開く。
 バスローブの裾が大きく割れ、股間がさらけ出された。泉から溢れる悦びの汁が、いつの間にかアナルの方まで流れてきている。
 貴和子は左手を胸もとから滑り込ませ、乳房を揉んだ。子供を産んだことがないからだろうか、柔らかさと瑞々しさを失っていない。手のひらの動きに形を変えながらも、跳ね返してくる弾力があった。
「ああ……っ」
 紅玉に触れるのとは違った悦びだ。
 脳を揺るがすほど強烈な刺激ではないが、じわりじわりと、快楽の小船に乗っているような気持ちになる。
 貴和子は小ぶりな自分の乳房が好きだった。
 十年前に結婚した時からサイズも変わっておらず、むしろ年齢を経てまろやかさと丸みが加わり、三十四歳の妖艶な色を溢れさせていた……。



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