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金色の背徳 第46話

2009/05/01 08:11 

 駿策の寝返りで、玲緒奈は目を覚ました。
 いつの間にか眠っていたようだ。いや、気を失っていたと言うべきか。
二週間ぶりの肉塊が自分の中で爆発し、下半身が激しく痙攣したことは覚えているが、それ以降の記憶がない。
――今までで最高、かもしれないわ……
 これまでの彼との約七年間、週に二回以上は身体を重ね続けてきた。回数にすればゆうに千回は超えているだろうが、ここまで我を忘れたのは初めてだった。出張の疲れがあるかもしれないが、それでも今日の悦びは格別だった。
 弛緩した肉体は未だ火照りを残しているが、指一本動かすのも億劫なほど全身の筋肉が痺れている。
――やっぱりあたしには駿策、駿策にはあたしじゃないと……
 隣で軽い寝息を立てる男の顔を見ながら思った。貪欲な玲緒奈の求めに、精魂尽き果てたように眠っている。
 ベッドにうつ伏せたまま、玲緒奈は悦楽の余韻を味わった。めくれ上がった毛布やしわくちゃになったシーツから、行為の激しさが見て取れる。
 気だるい上体を起こすと、ひしゃげた乳房が弾力を取り戻した。室内の暖房のせいか、肌は薄っすらと汗ばんでいる。ベッドサイドの時計に目をやると、午後四時半過ぎを差していた。
 二十二階建ての最上階までは、街の喧騒が聞こえてこない。二人でゆったりと過ごす分にはこの上ないが、うっかりしていると時の流れまで忘れてしまう。
――まだ時間は充分ある……
 玲緒奈は安心してベッドにうつ伏せた。薄い毛布を身体に掛け、何も考えずに目を閉じた。
 今日は深夜まで駿策に付き合ってもらう約束だ。
 もうしばらく怠惰な時間を過ごし、シャワーを浴びてから駿策を起こそう、玲緒奈は思った。それから軽く食事をして、もう一度抱かれたい……。
――埋め合わせをしてもらわなくちゃ
 若い愛人のエキスをたっぷり抽入されたことでストレスも解消し、新たな活力も湧き始めていた。
 出張中、一人寝のベッドで考えるたことは、駿策と海原家のこと、特に繭美と涼子のことだ。暗い天井を見つめながら、何度も自分と彼女たちを比べてみた。
 美貌と肉体、そして駿策を惹きつけて離さないベッドテクニックは、繭美や涼子に負けるとは思わない。
 スタイルは二十代の頃から変わっておらず、むしろ引き締まった上に、年齢に応じた柔らか味が加わっている。そのために弛まぬ努力を続けてきたのだ。
 それでも玲緒奈は不安だった。
 繭美には、はち切れそうな若さがある。十一という歳の差はどうにもならない。玲緒奈が真夏の太陽だとすれば、繭美は朝日である。
 そして涼子は弁護士であり、玲緒奈にない知恵や経験を持っている。今は大人しくしているが、いつ牙を剥いて襲い掛かってくるかも分からない。
――やっぱり駿策だわ……
 結局のところ、駿策の気持ちを掴んでおくのが完全勝利への必須事項なのだ。
 この点では、他の二人を玲緒奈が圧倒的にリードしている。これは自惚れでもなんでもなく、客観的な事実だ。
 しかし繭美は駿策の妻であり、涼子も彼と身体を重ねた過去がある。駿策が彼女たち二人と肉体関係を結んでいるという事実、これは消しようがない。
――あたしは彼を信じている。きっと駿策も……
 玲緒奈としては、そう思い込むしかなかった。駿策と抱き合うことでしか、このやり切れない思いをかき消すことはできないのだ……。


 今回をもちまして、「金色の背徳」第2部は終了し、次回からは、「十字架上の貴婦人」を公開致しますので、ご期待下さい。




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No:61 2009/05/03 15:53 | #[ 編集 ]

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