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金色の背徳 第31話

2009/03/06 22:04 

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「親切な人がいるのよ、世の中にはね。それともそれだけ敵が多い証拠かしら」
 玲緒奈の声が一段と甲高くなった。
「なんてこと……」
 血を吐くように涼子は呻いた。
 屋外プレイの刺激と彼の巧みな愛撫が融合し、昇天と同時に失禁までしたのだ。凄まじく乱れた昨夜の昂ぶりは、今も女体に刻まれている。
――まさかあの現場が写真に……――
 怒りと羞恥が融合した脳細胞が、エクスタシーにも似た衝撃を彼女に与えた。
 まるで首根っこを掴まれた猫のような心境だった。ここまであからさまな証拠を突きつけられては、さすがの涼子もぐうの音もでない。完敗だった。
「なかなか面白い写真でしょ」
 我を失った女弁護士を見下ろす玲緒奈は、自分の勝利を確信した。見事な快勝劇に酔いしれていた。
「この写真を……、どうするつもり……」
 死を前にした蝉のような声で涼子は呟いた。顔から血の気が失せ、指先が小刻みに震えている。
「あなたにあげるわ。大切な想い出でしょう? 大事にしないとね」
 それから続けて、
「それにあたしにはネガがあるから」
 何枚でも焼き増しができるのだと、暗に恫喝した。
「この写真を海原に見せたら何ていうかしら? 可愛い娘の夫を寝取ったあなたを決して許さないのは間違いないわ。駿策さんも大変だけど、あなたはもっと困るでしょうね」
 あの日、駿策から密会場所を聞いた玲緒奈は、自らカメラを持って出掛けた。
 給水タンクの陰に隠れ、行為に没頭する二人へ向け、何度もシャッターを押したのだ。湧き起こる嫉妬心を抑えるのが大変だったが、駿策を信じて彼の提案に従ったのだ。
「わたしだけじゃなく、駿策さんまで脅すつもりなの……、あなたという女は……、海原家を乗っ取るつもりで……」
 駿策がこの姦計の黒幕だとは、涼子も知る由もない。未だ彼は自分の味方だと信じているのだ。
「それはあたしが考えることで、あなたには関係ないこと。そうそう、海原だけじゃなくて、ゴシップ誌もきっと喜ぶでしょう……」
「やめて!」
 涼子は激しく首を振り、
「あなたの要求は何なの!」
 ソファを蹴飛ばすように立ち上がった。
「さすがは弁護士さん、交渉に応じるのね。なら言うわ、こちらからの条件は二つよ。一つは、海原家と一切の縁を切ること。もちろん駿策さんと会うことも許さないわ。二つ目は、顧問契約を打ち切ること、以上よ」
「あなたって女は……」
 真っ赤な唇が震え、豊かな髪が波を打っている。

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「あたしはそれほどの難題だとは思わないけど。写真が海原の元へ届けられるよりましでしょう。それに二つの条件を素直に認めるのなら、あなたに三百万円支払うわ。これまでの功労金としてね。どう?」
 玲緒奈の最後通告は、涼子に選択の余地を与えなかった。拒否すれば丸裸で放り出されるのだ。
「……分かったわ……。でもお願い、駿策さんには……、彼には危害を加えないで」
 打ちひしがれながらも、涼子は最後の抵抗を試みた。
「あなたに関係ないでしょ!」
 恋人気取りで馴れ馴れしい涼子の態度が、玲緒奈の逆鱗に触れた。駿策の肉塊で、この白い雌豚が存分に悦んだかと思うと、苛立たしくて仕方ない。
「契約解除の書類は後日送るから、署名して送り返してちょうだい。くれぐれも約束を守ってね。今日のことも駿策さんには黙っていなさい、いいわね。もし破ったらどうなるか分かってるでしょうけど」
 女の感情を交えながら玲緒奈がきつく言い渡すと、涼子は写真を収めた封筒を小脇に抱え、部屋を出て行った。
 熱く燃え上がったリビングに、再び静寂が訪れた。
「ふうっ」
 大きく息を吐くと、全身に勝利の喜びが浸透していく。最大の敵を完膚なきまで叩き潰した達成感は、セックスでの悦びとは一味違う良さがあった。
 テーブルの受話器を取り、駿策の携帯へ連絡を入れた。彼は事務所でこの報告を待っているはずだ。
「どうだった?」
 共犯者である義理の息子はすぐに出た。
「完璧よ、完璧。涼子はもうただの白豚にすぎないわ」
 喜び勇んで先ほどまで経緯を詳細に話した。
「そうか。正直、ちょっと心配したけどな」
 何気ない駿策の口調が、妙に恋しく思えた。涼子との対決は、自分で思った以上の神経を使ったのかもしれない。
「涼子を解任したこと、あたしから繭美に伝えておくわ。あの娘を慰めてやって、きっと驚くでしょうから」
「分かったよ、夫としてな」
「そう。妙な気を起こさないようにたっぷり可愛がってやるのが夫の役目。繭美にはあなたしかいないのよ」
 酷薄な笑みが玲緒奈の口もとを歪めた。
「なんだい、今日はいやに寛大じゃないか。いつもはチクチク俺を責めるくせに」
「あたしはいつも寛大だわ。じゃあしっかり頼んだわよ、しゅ、ん、さ、く、さん……」

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