金色の背徳 第16話
「じゃあ駿策さん……、よろしくお願いします」
身支度を整えると、女弁護士は澄ました顔で言った。
我を忘れて悶え狂った先ほどまでの姿が嘘のようだ。それでも心なしか、まだ頬が上気しているのが分かる。
「こちらこそ。もはや僕らは共犯者ですから」
何が「よろしく」なのか分からないまま、駿策は笑みを漏らした。
熟女の乾いた肉体に、男としての刻印を打ち込んだ満足感と、彼女を自分の愛撫の虜にできたとの達成感があった。
「そうね……、ねえ、また会えるかしら?」
潤んだ瞳で媚態を示す涼子にも、禁断の秘密を共有した甘さを含んでいる。早くも彼に次の密会を要求した。痺れるような快楽の前には、彼女もただの三十八歳の女である。
――やっぱり――
駿策はほくそ笑んだ。
「もちろん。涼子先生が望めばいつでも駆けつけますから」
「その先生ってやめてくれない? もう、わたしたち、他人じゃないんだから……」
すねるような口調で駿策にもたれかかり、ワイシャツの胸に頬を摺り寄せた。彼が火をつけた女体は、まだ火照りを残している。
「でも涼子さんと呼ぶ癖がついちゃったら大変ですから。今までどおり涼子先生で通した方がいいと思うんです。あなたにしても」
玲緒奈や繭美の前で、彼女を「涼子」と呼ぶことはできない。
「そうね、他人行儀みたいで残念だけど、しばらくは仕方ないわね」
涼子はバッグを肩に掛けると、名残惜しそうな足取りで部屋を出て行った……。
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